花丸な日々

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「劇場版ポケットモンスター キミにきめた!」感想

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2017年7月15日(土)より公開の『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』の感想・レビュー記事です。

コメントで指摘いただいた間違いの修正を含め加筆修正しました【2017年7月25日・追記】

1. ポケモン映画20周年記念作品「キミにきめた!」

今回の映画『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』はアニメポケモンの20周年記念作品にして、ポケモン映画の20作目でもあります。

 

ポケモン映画は例年、その年に放送しているTVアニメシリーズを踏襲した内容となっています*1。しかし今回は20周年ということで、サトシとピカチュウの出会いにフォーカスした、言うなれば無印アニポケのリメイク的映画となっています。

 

アニポケ1話でサトシとピカチュウの前に現れたホウオウも、今回の映画では中心的な立ち位置として登場します。今までなんらかの形でポケモンに触れたことのある人たちにとって、思い入れ深い内容となっています。

2. 『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』感想

ここでは『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』の内容本編について触れていきます。

2-1. リメイクじゃないよリスペクト映画だよ

予告CMなどで初代のリメイクを期待された方が多いかと思いますが、大筋としてはリメイクではなく初代リスペクト映画というべきものです。

 

その証拠に「サトシとピカチュウの出会い」「オニスズメからの逃走」「サトシとピカチュウの心の通じ合い」、これらは映画冒頭の10~15分以内で終わりました。その後にOP主題歌である「めざせポケモンマスター -20th Anniversary-」が流れます。このOP中にキャタピーをゲットするなど、割と展開を詰め込んでいましたね。

 

このように初代アニポケを思わせる展開・キャラなどが織り交ざられながらも、劇場版オリジナルストーリーが展開されます。ここでは劇場版新キャラクターであるポッチャマ使いのマコト、ルカリオ使いのソウジとの3人で冒険に出かけます。サトシがホウオウと出会ったときに手に入れた「虹色の羽」、これを手掛かりにホウオウにもう一度会いに行くというのが主なストーリーラインとなります*2

2-2. 脚本「首藤剛志」の衝撃

本作のスタッフクレジットには「首藤剛志」の名前がありました。

 

首藤さんといえばアニポケの初代からシリーズ構成や映画脚本にも携わった、アニポケ界の巨匠ともいうべき存在です。おそらく「一部脚本 首藤剛志」という表記だったかと思いますが(ここらへんは少しうる覚えです)、先のTVシリーズリメイクのシーンでは、首藤さんの脚本における台詞がほとんどそのまま踏襲されていました。首藤ファンとしては非常にうれしい限りです。

 

もちろんすべてTVシリーズと同一というわけではありませんが、製作陣の初代へのリスペクトの気持ちはとてもよく伝わってきました。たとえばサトシが寝坊するシーンでは、TVシリーズ1話でも登場したポッポの目覚まし時計が登場していました。一方でサトシがピカチュウにロープをつけて引きずるシーンでは若干表現がマイルドになっていたりしました。TVシリーズでは感電帽子用にゴム手袋をつけていたサトシですが、劇場版ではそこまで手の込んだことはしていませんでした。サトシはTVシリーズよりも少し大人びたような印象を受けましたね。

2-3. 散りばめられたオマージュ

本作では歴代TVシリーズ・劇場版へのオマージュやリスペクトを感じさせるシーンが多々ありました。冒頭のポケモンリーグ決勝戦で戦っていたのは、おそらく『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』に登場したスイートとソラオではないかと思います。

 

またワンカットのみですが初代からはシゲル、タマムシジムのエリカ(この人はバトルも台詞もあります)、『劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール ディアルガVSパルキアVSダークライ』よりアルベルト男爵、『劇場版ポケットモンスター 幻のポケモン ルギア爆誕』よりヤドキングなどがチラッと登場します。

 

歴代の映画・TVアニメを見ていると「懐かしい!」となるキャラやポケモンが数多く登場している点に製作陣の愛を感じます。ちなみに「タケシとカスミは出ないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、そのお答えは劇場版のEDを見て頂ければわかると思います。歴代のサトシの仲間たちが登場します*3

 

3. 『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』感想【ネタバレありにつき閲覧注意】

以降は本編ネタバレを含みます。閲覧注意です。

3-1. 『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』評価

端的に言えば、本作は新規層向けなのか、懐古層向けなのか、そのいずれかなのかよくわからないという印象を受けました。

 

新規層向けという意味であれば、昔のアニポケや劇場版を知らない世代に向けて、ピカチュウやサトシとの出会い、ヒトカゲ、バタフリーの成長と別れといった、今までのアニポケのエッセンスをうまくまとめていると感じました。

 

一方で昔のアニポケに思い入れの強い人からすれば、そもそもタケシとカスミは本編に出てきませんし、ストーリーもほぼほぼ新規オリジナルであるため、反感を買う部分はあるかもしれません。

 

ちなみに筆者はアニポケ映画は1~15作目の『劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ キュレムVS聖剣士 ケルディオ』あたりまでは鑑賞していました。残念ながら16~19作目のゲノセクト~ボルケニオンは見ていません。ゲームは『ポケモンムーン』をプレイしているため、『ポケットモンスター サン&ムーン』のTVアニメは再び視聴し始めています。

 

そんな筆者でもある程度元ネタは理解できたので、比較的初期の作品について見たことがあれば本作はそれなりに楽しめるのではないかと思います。

 

3-2. ヒトカゲにまつわる描写は見事

本作ではヒトカゲが登場するのですが、このヒトカゲを中心にサトシ、マコト、ソウジ、ガオガエン使いのクロスが結びついていきます。

 

ヒトカゲといえばTVシリーズでは元はダイスケというトレーナーの手持ちですが、弱いと捨てられ、結果サトシが手持ちポケモンとして向かい入れることになりました。劇場版ではこのダイスケの立ち位置が丸々クロスという劇場オリジナルキャラに引き継がれます。

 

ヒトカゲ→リザード→リザードンへの変遷はアニポケのストーリーの中でも屈指の見どころであり、これを主軸に置いた描写・ストーリー展開は高く評価できると思います。

 

個人的にはマコトソウジがヒトカゲを治療するシーンが好きでしたね。マコトソウジはポケモン博士を目指しているということで、短い時間ながらも長年旅してきた仲間と見違うほどに、うまくキャラ描写ができていたと思います。

 

3-3. クロスの「強さ」への信念

クロスはポケモンの強さを追い求めており、弱いヒトカゲを捨てたトレーナーです。このキャラ設定は『ポケットモンスター ダイヤモンド&パール』のシンジを彷彿とさせます。

 

クロスの考え方もひとつの信念であると劇中でマコトソウジが指摘していましたが、そのうえでサトシが「そんなの絶対間違ってる」と考え紆余曲折するのが本作のひとつの主題でもあります。この対立軸があるからこそ、後述するサトシの闇落ちにもつながりますし、終盤のサトシとのバトルや描写にもつながります。

 

個人的にはマーシャドーに操られたルガルガンに噛みつかれたクロスのシーンが好きですね。クロスは「強さ」を追い求めて闇落ちしたサトシの慣れのはてという描かれ方をされていたのが印象的ですが*4、改心できてよかったです。

 

現実世界には厳選の名の元にしたクロスさんがいっぱいいるので、とても胸に刺さりました()

3-4. サトシの闇落ち

アニポケでサトシが闇落ちしたのは今回が初めてではないでしょうか?

 

サトシはクロスとの「リザードvsガオガエン」の対決で敗北したことをきっかけに(劇中では初めて敗北した…?)、「ピカチュウなら勝てた」「(ピカチュウに対して)最初にフシギダネやゼニガメをもらっていれば…!」と闇落ち的台詞を言ってしまいます。

 

この闇落ちはサトシが本来抱える心の弱さや幼さに由来するものなのか、マーシャドーが影にいることが影響しているのかはよくわかりません。

 

よく遊戯王地方では千年リングで闇落ちしていると揶揄される闇サトシですが、アニポケに限って言えば『ポケットモンスター アドバンスジェネレーション』第177話「バトルピラミッド! VSレジロック!!」でポケランティス王に取りつかれたサトシが唯一闇落ちした描写ではないかと思います。

 

いずれにしても、闇落ちしたサトシが改心し、「自分にとってポケモンとはなにか?」「ポケモンマスターとはどういう存在なのか?*5」、それらの答えを見つけることが本作の最大のテーマと言えるでしょう。

 

3-5. 若干くどい描写はあった

少し描写としてくどいかなあという部分はありました。

 

たとえば冒頭では石を誤ってオニスズメにぶつけてしまい、サトシとピカチュウがオニスズメの大群に追われることになります。劇中ではこの後、イワークやオコリザルについてもまったく同じ展開が繰り広げられるので、鑑賞していて「またかよ…!」と思う場面は正直ありました。

 

一応補足すると、同じ展開でもサトシの執る対応は異なるので、その意味でサトシの成長を感じるシーンという意味付けはあるのかもしれません。

 

冒頭のサトシの前に飛び出して十万ボルトを放つピカチュウと、終盤の対比はなかなかいい意味で裏切られましたが、素人目には少しくどいかなあという風に映りました*6

 

3-6. ポケモンの死生観

本作のテーマとして「ポケモンの命」というのが一つ挙げられるかもしれません。

 

「ヒトカゲのしっぽの炎が消えたら死んでしまう」「(バタフリーに対して)子供を残すために旅に出る」など、アニポケではポケモンの命も主要なテーマのひとつです。

 

中でもソウジの過去として、雪山で遭難した自身をかばって凍死(?)してしまったレントラーのエピソードは、明言していないとはいえ、ポケモンの生死について一歩踏み込んだ内容となっていました。これはホウオウが『生命の蘇生』の象徴であり、そもそもエンテイ・ライコウ・スイクンに命を与えたのがホウオウという設定があるという事情もあるのでしょう。

 

3-7. マーシャドーとは

ごめん、よくわからなかった。

 

てっきり劇場版の伝説ポケモンにありがちな、なんやかんやサトシと共闘するポケモンかと思いきや、実際はほぼラスボス的存在としてサトシたちの前に立ちはだかりました。

 

ホウホウが正しい心に対応するのに対して、マーシャドーは悪の心に対応するとのことでしたが、つまりどういうことだったんだ?という感じです。

 

サトシのことをずっと影から見守っていた割には、クロスの悪のこころで色を失った「虹色の羽」を手にすると、暴れだしてしまいました。ここらへんのくだりは残念ながら一回見ただけでは理解できませんでした。

 

ただサトシに見せた悪夢(?)もマーシャドーが見せていたものだとすれば、なかなか面白いです。サトシの見た悪夢にはポケモンが存在しない、いわゆる我々が生きる現実世界が広がっています。「ポケモンのいる世界こそ夢だったのではないのか?」そう思わせる演出は鳥肌ものだっただけに、このあたりの設定のつかみどころのなさが大変もったいなく思います。この映画の最大のネックはここではないでしょうか?

3-8. ピカチュウが喋るわけないだろ!

なんとピカチュウが喋ります。

 

正確にはピカチュウが人の言葉を発したというよりは、絆が深まった結果、「サトシがピカチュウの言葉の意味を理解できた」と解釈するのが適切でしょう。

 

一言とはいえ、いわゆる大谷育江ボイスで人の言葉を発するので、「光彦くん!?」とか「チョッパー!?」みたいな驚きがありました。本作一番の衝撃シーンかと思います。

 

そもそもTVシリーズでは当初はもっとデブっぽい体形で生意気な態度だったピカチュウですが、本作では最初から愛らしいスリムなフォルムで一貫して描かれています。ピカチュウプロジェクトというだけあります。マスコットは可愛く描くという矜持を感じます。

4. 総括

 

いわゆるTVシリーズのリメイクものを期待するとがっかりしてしまう類の作品かと思います。初代アニポケに強い思い入れがあると、歴代アニポケのエッセンスを切り売りした作品とも捉えられかねないので。

 

ただパラレルと割り切ってみれば見どころは多くありますし、やはり昔のアニポケを知らない世代にその魅力を伝えるという点では大きな意義があると思います。この作品をきっかけに昔のポケモンを知らないお子さんなどとも、会話を弾ませることができるのではないかなあと思いました。

 

劇場ではマーシャドーの受け取りや、スペシャルガオーレディスク「キミにきめたキャップ ピカチュウ」などがもらえます。

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P.S. 普通に内容目当ててDSを持っていくのを忘れたので、マーシャドー目当てにもう一度観に行こうかなあと思います。

 

また『劇場版ポケットモンスター 水の都の護神 ラティアスとラティオス』が7月16日(深1:35~)よりテレビ東京にて、またテレビ東京系列および全国各局でも順次放送されます。こちらも見逃せません。

【参考文献】

*1:キャラクターや手持ちのポケモンなどいわゆるスポット参戦。ただしアニポケ本編と映画はパラレルワールド的扱い

*2:そもそもTVアニメシリーズでは「虹色の羽」は登場しない……はずなので、完全にTVシリーズとは別物、ないしはパラレルワールドと捉えた方がよさそうです

 

下記のインタビューでは湯山監督がTVアニメ一話のパラレルワールドだと明言してますね。

ポケモン映画20周年記念作をより楽しむ7つのトリビア | ORICON NEWS

*3:セレナは髪を切る前のロングヘアだったので、サトシと出会う前の仲間たちという体なのでしょうか?

*4:サトシと同様にホウオウを見たが、虹色の羽はもらえなかったクロス。羽はもらえなかったものの、ホウオウを見ることができたということは、その潜在的資格は持ち合わせていたのではないでしょうか?

*5:ポケモントレーナーとポケモンマスターの違いを提示したという意味で、本作は大きな意味を持ちうるのかもしれません

*6:しかし黄色の花畑とピカチュウの結びつけは見事というほかない