花丸な日々

花丸総研の雑記ブログです。

映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』感想

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映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を鑑賞したので感想・レビュー記事です。

1. 映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」とは?

●ストーリー
夏休み、とある海辺の町。花火大会をまえに、「打ち上げ花火は横からみたら丸いのか?平べったいのか?」で盛り上がるクラスメイト。そんななか、典道が想いを寄せるなずなは母親の再婚が決まり転校することになった。

「かけおち、しよ」

なずなは典道を誘い、町から逃げ出そうとするのだが、母親に連れ戻されてしまう。それを見ているだけで助けられなかった典道。

「もしも、あのとき俺が…」

なずなを救えなかった典道は、もどかしさからなずなが海で拾った不思議な玉を投げつける。すると、いつのまにか、連れ戻される前まで時間が巻き戻されていた…。
何度も繰り返される一日の果てに、なずなと典道がたどり着く運命は?

 

●声の出演
広瀬すず 菅田将暉
宮野真守/浅沼晋太郎 豊永利行 梶裕貴
三木眞一郎 花澤香菜 櫻井孝宏 根谷美智子 飛田展男 宮本充 立木文彦/松たか子

 

●スタッフ
原作:岩井俊二
脚本 :大根仁
総監督:新房昭之 
企画・プロデュース:川村元気
監督:武内宣之
キャラクターデザイン:渡辺明夫
音楽:神前暁 
主題歌:「打上花火」DAOKO×米津玄師(TOY’S FACTORY)
アニメーション制作:シャフト

『打ち上げ花火』新房総監督が考える、実写作品をアニメ化する意義 | 【打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?】 | アニメイトタイムズ〉より

1-1. 「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」原作は1993年のドラマ

本劇場アニメの原作は1993年放送のオムニバスTVドラマ「if もしも」(フジテレビ系)。その中の一篇として放送された岩井俊二氏の監督・原作・脚本による同名ドラマです。

 

岩井俊二氏は本作にてTVドラマとしては初めて日本映画監督協会新人賞を受賞。1995年8月12日には再編集のもと劇場版が公開されました。

1-2. 原作ドラマと本作の違いは?

登場人物の名前や設定はほぼ共通です。今回の映画版で決定的には異なるのは“もしも玉”*1の存在です。

このアイテムによって主人公の典道は同じ日を繰り返すことになります。他にも原作ドラマでは主要登場人物は小学6年生ですが、本作では中学1年生になっているなど、アニメとしてリメイクするにあたっての設定変更が見受けられます。

 

ただし本作には原作ドラマを意識した構図やカットなどが多数確認できるため、原作ドラマに最大限敬意を払っている姿勢が伝わってきます。

 

2. 映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』感想

一言で言うと「スルメ映画」です。

2-1. 実写とアニメの要素を融合した新感覚

本作は原作が実写ドラマということもあり、かなり実写的要素を含んでいるのが特徴です。本作の脚本を務める大根仁さんは映画「モテキ」や「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」といった実写映画の監督でもあります。

 

そのため台詞回しがいわゆる「アニメ的な説明台詞」でなく、日常で出てくるような「特に意味のない言葉」などが多く登場します。これはアニメ映画をよく鑑賞する筆者から見ると新鮮でしたね。

2-2. シャフトの作画がよかった

本作はアニメスタジオ「シャフト」が作画を担当しています。

 

新房昭之氏が総監督でシャフトのアニメというと、「シャフ度」であったりとか、特徴的で独自の作画演出を思い浮かべる人も多いかと思います。結論から言うと本作の映画ではそうしたシャフト的演出は影を潜めています*2

 

ヒロインのなずなについても、渡辺明夫氏がキャラクターデザインを務めていることもあり、少女ながらも妖艶で神秘的な描かれ方をされていました。特に劇中の打ち上げ花火の作画もきれいで、まさに夏を彩るのにふさわしい映画だと感じました。

2-3. 主題歌「打ち上げ花火」が名曲

主題歌は手放しで絶賛できると思います。CMのこの曲を聴いて、鑑賞を決めた人も少なくないのではないでしょうか?(花丸総研もその1人)

 

それとこれは後になって知ったのですが、こちらの楽曲を歌っている米津玄師氏は元々ハチ名義にてニコニコ動画でボーカロイド楽曲をあげていた経歴があります。

 

好きなボカロ曲を何曲も作っている人だったので、とても驚きました。

 

同じく主題歌を歌っているDAOKOさんは本作の挿入歌も担当されています。こちらの曲は原作ドラマの主題歌をカバーしたものとなっており、そのMVは岩井俊二監督が、当時ドラマのロケ地である千葉県飯岡で撮影したものとなっています。

 

3. 映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』感想【ネタバレありにつき閲覧注意】

先に褒めたので、ここでは気になるポイントや、ネタバレ・考察について述べます。

3-1. 「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」に特に意味はない

本作のタイトルはなかなか興味を引くものなのですが、このタイトルそのものに大した意味はありません。本編では「花火は横から見ると丸いのか平べったいのか論争」が永遠と繰り広げられますが、これといって大きな伏線として回収されるわけではありません。

 

一応「打ち上げ花火が平らに見える世界はIFの世界」という意味合いはありますが、それだけです。タイトルに深い意味を求めると、ずっこけてしまうかもしれません。

 

3-2. 同級生の会話が退屈

先ほどアニメ的な台詞ではなく、日常生活にあるようなリアルな台詞回しがあると述べました。しかしおそろしく内容が空っぽすぎるほか、それにより伏線が張られるとか、キャラがつかめるというような役割が微々たるものなので、見ていて退屈な場面が多かったです。

 

一応フォローすると原作ドラマでもこの点は似たようなもので、いわゆる小学生男子のくだらない会話パートがあります。ただ原作ドラマが小学生6年生、本作が中学1年生であることを考えると、少々語彙力がなさすぎでは?と思ってしまいました*3

 

実写的な台詞回しをするという試みとしては評価したいのですが、単純に映画として面白いかといわれると厳しかったです。ただ原作ドラマが45分、本映画の尺が90分であることを考えると、こうしたパートで水増ししないといけなかったのかなという気はします。

 

もっともサブキャラクターにも豪華声優陣が声を当てているので、たとえば宮野真守氏に「うんこ行ってくるわ!」とか、そういう台詞を言ってもらうことがうれしい!という人であれば一定の需要はあると思います。

 

3-3. なずながエロい

なずなについてはかなりエロティック的に描かれていました。これについては本作の魅力の一つとしてあげられるかと思いますが、ちょっと生々しい印象もありましたね。

 

実写ドラマの方だと、なずな役の奥菜恵さんがものすごい美少女なんですね。彼女がとても神秘的で、だからこそ実写ドラマが成立しているといってもいいかもしれません。言い方を変えると、奥菜恵さんしか考えられないなずなを、アニメだからこそ再現できたということです。

 

なずな役の広瀬すず氏は劇中にて松田聖子さんの「瑠璃色の地球」のカバーも歌っています。歌そのものはとてもよかったのですが、列車に典道と乗り込んでから、「私アイドルもいけると思うんだけどな」といって急に歌いだします。その際謎の夢空間が出現したりするので、ちょっと唐突でびっくりしました(そこはリアル路線ではいかないのか…)。

3-4. 典道の覚醒は遅め

主人公の典道くんですが、主人公らしい動きを見せるのはわりと本編中盤ほどになります。それまではどちらかというと友達の祐介くんの方が主人公っぽい感じです。

 

駅でなずなの再婚相手にとびかかるシーンはなかなかよかったですね。本編でも言及されていますが、周りから一歩引いて見ている感じのキャラなので、前半部はなかなか主人公らしいことはできていない印象があります。

3-5. 結局もしも玉はタイムリープなのか?

本作はいわゆるタイムリープものなのかといわれると、かなり微妙なところです。

 

まず典道くんがタイムリープに自覚的であったのかもよくわかりませんし(1回目のループ時)、さすがに3回目では「俺はこの世界でお前といたい!」みたいなことを言っているので薄々勘づいているとは思います。

 

ただ本編でもこれがタイムリープとは明言されていないので、たとえば「なずなor典道が造り出した別の世界線への移動」と捉えた方がつじつまは合います(なずなの「これは典道くんの世界なんだね」という台詞など)。

 

発動条件も「もしも~だったら」と言ってからもしも玉を投げつけて割ると効果が発動するということで、わりとざっくりしています。

3-6. 結局最後は典道はどうなったの?

なずなが転校したと思われる夏休み後の学校には、典道の姿がないということが判明し映画を幕を閉じます。

 

こちらの解釈としては、

  1. 単純にその日は典道が学校にいなかった
  2. 典道が別の世界線に移動した
  3. その他

この3つのいずれかでしょうか。いずれにしても考察をはかどらせるような、余韻エンド、ないしは投げっぱなしエンドと言えそうです。

 

花丸総研としては割と悪くない終わり方なのではないかなと思います。あれこれ考えるのは好きなので。

 

ただし映画は結末以外にも諸々説明不足な点があるため、全体的にふわっとしている印象はあります。たとえば「なずなはなぜ典道に好意を抱いていたのか?」「祐介はなぜはじめは典道になずなを譲るようなそぶりを見せたのか?」「もしも玉ってそもそも何?タイムリープなの?」などなど、前提条件がはっきりしていないので余韻がかなり薄れてしまった感はあるかもしれませんね。

 

この映画に対してネガティブな評価をしている方は、そうした点を問題視しているのではないでしょうか。

3-6. なずなと典道くんの身長差が萌える

話は変わるんですけど、典道くんとなずなの身長差はわりと萌えました。あの年ごろだと女の子の方が大人びていたり、身長が高かったりして、それを気にして背伸びする男の子とかいうシチュエーションが好きなんですよねー(花丸総研の性癖)。

 

あと典道くんが狛犬っぽくてかわいいなと思いました。たぶん眉毛のせいです。

 

3-7. 原作「打ち上げ花火」は「銀河鉄道の夜」がモチーフ

これは映画公式サイトにも載っている情報ですが、原作ドラマの「打ち上げ花火」は宮沢賢治の作品「銀河鉄道の夜」がモチーフとなっているとのことです。

 

確かに映画には水面を走る列車など、それらしきシーンがあったので「もしや?」とは思っていました。このように原作がモチーフとしたものや、なずなと典道がかけおちしたその後のストーリーが展開されたという意味では、本作はかなり補完的な役割を果たしています。

 

この点はアニメ映画としてのリメイクならではのことだと思います。

4. 総括

個人的には弱い部分もありつつも、かなり好きな要素のある映画だなあと思いました。その分もったいないなあと思う箇所もありました。

 

ただこの映画に対する批判というのは、①「君の名は。」と比較した際の大衆向けエンタメ性の欠如(=わかりやすい面白さであるか)、②実写原作ドラマ「打ち上げ花火」との比較による懐古勢からの批判、の2パターンではないかと思います。

 

なずながホースで水をかけるシーンとか、母親に連れていかれるシーンなどはまんまドラマ版の構図でしたし、ドラマの奥菜恵氏に思い入れのある人はオマージュだとわかっていてもちょっと受け入れがたい部分もあるかもしれませんね。

 

花丸総研はそうしたドラマ版に再び光を当てる機会をもたらしたという意味では、この映画を評価したいと思います。ポケモン映画のときにも似たようなことを言ってた気がします。リメイク作品は必ず通る道ですね。

hnml.hateblo.jp

インタビューなど見ると、新房昭之総監督も「なんで今さらこれをリメイクするの?」みたいに感じていたようです。岩井俊二ファンの皆さんが飲み会でわいわいガヤガヤ楽しみながら作ったのが本映画という印象ですね。

 

先ほど述べたように、いかに映画の外にある先入観を取り払って、この映画を楽しめるかが焦点になるのだと思います。花丸総研は観終わった後そうした部分を取り払えたので、やっぱりいい映画だなと思いました。

*1:映画スタッフ間での通称

*2:ちゃんと背景もあります

*3:語彙力がないというのは本編のキャラも言及していることなので、この点は製作陣の意図的なものだと思います